2月14日

その昔、とっくの昔。好きだった相手にチョコレートをあげたことがある。

手作りのものを要求されたのでそうしたが、チョコがあまり好きでない彼はひと口齧って部屋のすみに放って、わたしはそれを少し食べて、余ったものはこの手で捨てた。そんな恋愛がわたしの慣れ親しんだもの。

それも片手の指で十分足る数しか経験はない。

 

自分が恋愛をするという前提で人生を送っていないせいで、この年になって困ることが増えた。

恋バナの仲間に入れてもらえることは嬉しいが、おかしな発言をしないか不安で中学生が読むようなハウツー本を読み漁ったりした。

そんなハウツーで自分の足りなさが埋まるわけもなく、現実的には無惨なものだ。

親密な人間関係というものがわからないのだ。

わたしなりに克服しようともがいてはいるが、他人から見れば失笑ものだろう。

 

今朝はコンビニでチョコレートを買った。ゴディバだ。ゴディバ男爵!とマスクの下で小さく呟く。ラーメンズのどのコントだっけか。

職場でパソコンに向かいながら1かけら、2かけらと口のなかに放り込む。自分で買って自分で食べる。なんと合理的で、傷つかない方法なのだ。その平和に安堵する。傷つかない恋愛などない。わかっている。だが、痛むのは怖い。二度と立てないような気がしてしまう。

だからといって誰とも関らず、生涯逃げたって逃げ切れるわけはないのだよなあ、ってわかってはいるのだけれど。あれやこれや言い訳をして今日が過ぎる。明日になっても同じだろう。だからわたしはうんざりしている。卑怯な自分にうんざりしている。