2月12日

職場では、黙々とパソコンにデータを打ち込んでいる。

健康上の問題を抱えた職員として雇われているわたしは期待される立場ではなく、実際、有期雇用の使い捨てだ。それでも上司は優しく、他の職員とも仲良くやれていて、わたしはこの職場を気に入っている。

 

対人関係に疲れたわたしの猜疑心は深く、人事評価でいくら褒められようとも喜びはなかった。

安堵からお礼を口にしながら頭を下げた。

きっと、疑わなくてもよかった。浮かれてもよかった。ただわたしにはそれができなかった。

楽しくてニコニコするたび周りの誰かに「調子に乗ってる」と毒を吐かれた。繰り返すうちにわたしは自分について喜ぶことをやめてしまった。

黙々と積み重ねることができるのは今のわたしの長所かもしれないが、実際のところそうしないと不安で落ち着かない。漫然と過ごすことに焦燥感をおぼえるのだ。なにかしていないと過去の亡霊がわたしを責め立てる。なにもしない時間が苦痛でしかない。

 

期待される立場でもなく、地位や名誉があるわけでもない。預金残高も500円を切った。

だから、失礼な言葉を投げかけられることもある。言い返せない。

自分についてなにも話さなくなった。すべて前向きな言葉に置き換え明るい人物として振る舞う。

そうしてわたしは明るく前向きな性格と評されるようになった。本来の自分、だと思っている側面を出さなければ傷つくことは減る。

誰かと関わることに疲れきったわたしの防御策であるが、そうは思われたくない人にまで影響が及んだようだ。少しだけ寂しくなって、かと言ってなにもできず小さくため息をつく。

外は散歩日和だが、わたしはまた本を読み始めた。